■2022年2月 人間の体シリーズ 膝(ひざ)2

跪拝(きはい)
ひざをついての祈り

夕べの献げ物のときになって、
かがめていた身を起こし、
裂けた衣とマントをつけたまま
ひざまずき、わが神、主に向かって
手をひろげ、祈りはじめた。
(旧約聖書「エズラ記」9:5-6)

 人気テレビドラマ「半沢直樹」シリーズ、「倍返しだ!」が有名になりましたが、もう一つ わたしが注目したものがあります。
 土下座(どげざ)です。
 土下座というと、あやまれ、謝罪しろ、と無理矢理 強要することばかりが頭をよぎります。でも本来の意味はちがう、という説があるそうです。
 日本では古来、貴人が目の前を通過する際の最高の礼として、土下座の姿勢をとったというのです。
 あなたを尊敬し、言われることを実行します、と自分の真心を表現する手段として土下座をしました。
 それが中世以降、身分制度を明確にするため、立場の上下をはっきりさせるため、土下座を活用するようになったといわれています。

 正教会における「ひざをついての祈り」は、どういう意味をもつのでしょうか。
 祈りの姿勢は、ふつう、叩拝(こうはい)、弓拝(躬拝、きゅうはい)、伏拝(ふくはい)の三つがあげられます。
 三つめの祈りの姿勢、伏拝にもすこし重複しますが、四つめの祈りの姿勢があります。
 これが、ひざを地につけての祈り、跪拝(きはい)です。
 跪拝は、特殊な祈りである同時に、ハリスティアニン(クリスチャン)にとっては、もっとも身近な祈りの姿勢のひとつです。
 ひざから下、すねや足の甲(あるいは つまさき)を地につけ、ももから上を立て、天をあおぎ祈ります。
 たとえばイイススは、一人になっての祈り、独処(どくしょ)の祈りのとき、この姿勢で祈った、といわれています。
 この祈りは、正教会の聖なる伝統となって、うけ継がれていきます。
 それをこれから、紹介しましょう。

(長司祭 パウェル 及川 信)