……思い上がることのないようにと、わたしの身に
一つのとげがあたえられました。それは思い上がら
ないように、わたしを痛みつけるために、サタンか
ら送られた使いです。この使いについて離れ去らせ
てくださるようにと、わたしは三度、主に願いいま
した。すると主は、
「わたしの恵みはあなたに十分である。力は弱さの
なかでこそ十分に発揮されるのだ」
と言われました。
(新約聖書「2コリント書」12章参照)
聖使徒パウェルが、おそらく「てんかん」であった事実は、よく知られています。突然昏倒し、意識不明となり、目が覚めると、おそいかかってくる死への恐怖。いまも完治する即効薬のない難病です。
聖像(イコン)はダマスコ途上、神に出会った聖使徒パウェルです。
ひとの体のなかで、鍛えようのない部位の一つが「すね」だといいます。
すねから、かかとへと下ると、アキレス腱があります。
すねは、弁慶の泣きどころ。勇士アキレスの泣きどころが、アキレス腱です。
筋肉疲労などにより、すねのうら、ふくらはぎなどが、肉離れを起こすことがあります。この痛みも激烈です。
こむらがえりとか、寝ていて、ふくらはぎから足にかけて「つってしまう」こともあります。これも突如おそってくる激痛の波動に悶絶します。
一方じぶんの努力や訓練によって克服できる弱点があります。
たとえば、怒りっぽい、グチばかり言う、観察力や注意力の不足、恨みを忘れられない、など。
その一方、生まれついての弱点、あるいは弱みのようなものもあります。
ほかのひとと自らの体型・顔つきなどを比べて嘆くこと、おなかが弱くてすぐゲリをする、目の筋肉が弱い……これはわたしが眼科医に言われたことです。目の筋力・耐久性が弱いので眼精疲労がほかのひとよりひどくなるスピードが速い、といわれました。
弱み、弱点、ひとのふつうの努力では克服しえない身体的現象が、わたしたちにはあります。ときには一生のつきあいとなります。
困ったことに、からだだけでなく、心や精神にも、長年つれそっている弱点、弱みがあります。なかなかうまく直りません。
では失望したままで良いでしょうか。
自分の力ではどうにもできない弱みや弱点を補い、助けてくださるのが神です。
「わたしの恵みはあなたに十分である。力は弱さのなかでこそ十分に発揮される」
そう神は言います。
弱いところ……すぐ折れそうになり、萎縮する心があります。
完全無欠、完璧無比をよそおい、無理な見栄を張る必要はありません。
ときには神のひざにすがりつきましょう。愛をもとめて。
きっと生きる勇気と希望を、神がおあたえくださることでしょう。
(長司祭 パウェル 及川 信)