■2021年11月 人間の体シリーズ 腿(もも)2

遺言執行の徴(しるし)

イスラエル(イアコフ)は死ぬ日が近づいた時
息子イオシフ(ヨセフ)を呼び寄せて言った。
「もし、おまえがわたしの願いを聞いてくれる
なら、おまえの右の手をわたしの腿(もも)の
間に入れ、わたしのために慈しみとまこととを
もって実行すると、誓ってほしい。どうか、
わたしをこのエジプトには葬らないでくれ。
わたしが先祖たちと共に眠りについたなら、
わたしをエジプトから運び出して、先祖たちの
墓に葬ってほしい」
(旧約聖書「創世記」47:29〜30)

 ユダヤ人のとその国を「イスラエル」と称する起原ともいうべき列祖、イアコフは、一番信頼するイオシフ(ヨセフ)に誓いを立てさせます。
 これは「手をわたしの腿(もも)の間に入れ、天の神、地の神である主にかけて誓いなさい」(創世記24:2、9)と同意義です。
慈しみと真実(まこと)をもって、遺言を実行することを、天地神明にかけて宣誓します。
 信仰の相続とは、おそらく「生命をかけた誓い」なのでしょう。
 わたしたちの多くは、遺言の内容というと、おおむね お墓や祭壇(仏壇)の継承くらいに、想定しがちなのですが、イスラエルは、わたしたちの帰るべき国が「神の国」天国であると言明します。
 すなわち、わたしたちの 国籍は、天にある のです。
 遺言というと、ついつい財産、お金や土地、金銀宝石を想像してしまいますが、ほんとうは人の生き方、だれといっしょに、どこへ向かって生きるのかが重要なのでしょう。
 神と共に、救い主イイススといっしょに、神の国をめざして生きる、その共同体、家族が、正教会です。
 アダムとエバ(イブ)に始まった、創世以降の人間の壮大なドラマは、信仰の相続、信仰財産の相続執行という、神の民の生き方にあらわれています。

(長司祭 パウェル 及川 信)