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聖書大好き講座

クリスマス小品集2『恋人たちの夜明け』(及川信 著)


2024年11月15日刊行予定
及川信 著 クリスマス小品集2『恋人たちの夜明け』
四六判・216頁・1,540円(税込)
ISBN978-4-911054-38-3 C0016
詳細:株式会社ヨベル
お求めは京都正教会まで


facebook投稿より(solae ソラ 様)


分断の時代の架け橋として
――聖人の言行が我々に示すもの―― 

評者 岩崎 真紀

 本書は日本ハリストス正教会京都正教会で長司祭を務める及川信氏による、ヨーロッパや小アジア、北アジアに生きたキリスト教の聖人たちをめぐる物語である。著者が過去に著した二大祭日 降誕祭と復活祭)にちなむ著作『クリスマス小品集 みちびきの星』(ヨベル、2021)、『イースター小品集 わたしが十字架になります』(同、2023)につづく第三弾にあたる。
 七つの小作品から成る本書の舞台はイスパニア(スペイン)とユダヤ(パレスチナ、イスラエル)からはじまり、リキア(トルコ南沿岸)、ローマ(イタリア)、ブリタニア(イギリス)とアイルランド、コンスタンティノポリス(トルコ・イスタンブル)、ゲルマニア(ドイツ)、シベリア(ロシア)、時代は十二使徒が生きた1世紀から日本に正教がもたらされる直前の19世紀後半までと多岐にわたる。
 読者は時間と空間を超え、聖人たちの揺るぎない信仰心、他者への無償の愛、そして彼らが起こした奇跡の物語へと誘われる。祝祭をモチーフにした物語のほとんどは著者による創作であるものの、その根底には実際に正教会に伝わる伝承や聖人伝が横たわっている。
 第一話「星降る大地」は十二使徒の一人聖ヤコブ(1世紀)、第二話「くつしたの贈りもの」はサンタクロースのモデル聖ニコラウス(4世紀)、第三話「恋人たちの夜明け」は聖バレンタイン(?~269頃)、第四話「とらわれびとのクリスマスツリー」はアイルランドの使徒聖パトリキウス(?~457/61)、第五話「きらめく聖歌」は名聖歌作者聖ロマン(496~556)、第六話「聖樹(クリスマスツリー)伝説」はドイツの使徒聖ボニファティウス(672/5~754)と聖リオバ(710頃~782)、第七話「オーロラに照らされて」は北米の亜使徒聖インノケンティ(1797~1879)と日本の亜使徒聖ニコライ(1836~1912)がそれぞれ主人公である。
 七つの物語のあとには各物語の象徴性についての土田定克氏(ピアニスト、尚絅学院大学教授、仙台ハリストス正教会聖歌隊正指揮者)による明快な解説「聖なる美は 時空を超えて」がつづく。作品世界の理解を助ける色彩豊かでシンボリックな種々の挿絵はイコン画家の白石孝子氏による。
 本書のほとんどの物語に共通しているのは、聖人と彼に従った敬虔な信徒たちが、キリスト教が受容されていない土地で、真摯に、そして、平和的に、宗教的・文化的他者と向き合い、分断された二つの共同体の架け橋となりながら、神のために生を全うしたという点である。
 翻って我々が生きる2025年はどうだろうか。海外ではウクライナ戦争、ガザ人道危機、アメリカ新政権のDEI(多様性、公平性、包摂性)政策廃止、日本国内では首長選挙における対立候補やその支援者に対するSNSを通じた誹謗中傷や真偽不明の情報の流布、学校・会社でのいじめやハラスメント、家庭でのDVや虐待等、国家間、集団間、個人間の分断や他者への物理的・心理的攻撃は枚挙に暇がない。
 本書に描かれた聖人たちの宗教的・文化的他者への向き合い方は、時代や民族、文化、宗教の違いを超え、現代に生きる我々が異質な他者といかに共生していけばよいか、実に多くの教訓を伝えている。

(いわさき・まき = 松山大学教授)
+キリスト教書評誌「本のひろば」5月号

及川信著「クリスマス小品集2 恋人たちの夜明け」
(四六判 216頁 1400円税別 ヨベル)

待望の正教布教の通史、ついに刊行『日本正教史 幕末から現代まで


『日本正教史 幕末から現代まで』
(及川信[監修] 及川信、伊藤慶郎、ハリン・イリヤ、小野貞治 著)
5,500円(税込)
お求めは京都正教会まで

イースター小品集『わたしが十字架になります』(及川信 著)

イースター小品集『わたしが十字架になります』(及川信 著)

2023年3月20日刊行予定
及川信 著 イースター小品集『わたしが十字架になります』
1,540円(税込)
詳細:株式会社ヨベル
お求めは京都正教会まで


繊細かつ劇的で虹色の光を放つ水滴のような言葉

及川 信著『イースター小品集 わたしが十字架になります』

龍谷大学国際学部国際文化学科教授
久松英二

本書は、イエスの死と復活にまつわる福音書の記述に関わりのある人物やモノを素材として、著者が豊富な聖書知識をイマジネーションと斬新な発想でアレンジし、8編のショートストーリーに紡ぎあげた珠玉の作品である。
たとえば、第1話「赤いゆり」は、純白のゆりが少しずつ赤みを帯びて、最後には深紅に染まるプロセスを、受胎告知、カナの婚宴、ラザロの復活、磔刑後のイエスの遺体を乗せた荷車の移動という時間経過の中で描出している。もちろん、福音書にはそのすべての場面においてゆりは登場しないが、著者は明らかに受胎告知の図像で定番のアトリビュートである大天使ガブリエルが手にしている白ゆりから着想を得たと思われる。純潔を連想させる純白のゆりを天使からもらったマリアは、やがてぶどう酒の奇跡によって盛り上がるカナの婚宴の喜びを象徴する「ワインレッドのような赤色」のゆり、ラザロに吹き込まれた新たな命を謳歌する「みかん色、うす紅色、桃色」のゆり、そして最後に十字架で流した我が子の血を象徴する「真紅」のゆりに出会う。ゆりの色の変化がマリアの心の動きと連動していく様は、繊細かつ劇的である。
アレゴリカルなストーリーとしては、本書のタイトルにもなっている「わたしが十字架になります」が印象的である。イエスの受難が始まる頃、エデンの園に降り立った天使が、そこに集った草木に対しイエスが受難に要する道具となるよう指示する。すなわち、いばらの冠には「パリウルス」というとげのある木が、イエスの遺体に塗られるはずの香油にはオリーブ、バラ、乳香の木が、イエスが纏う一枚の亜麻織物には亜麻が、聖体礼儀によって実現される「救いのはじまり」の杯となるべきぶどう酒には、ぶどうの木が指名される。しかし、最後に「十字架の木」となるべき者を天使が残りの草木たちに募ったところ、役割を終えた後、火に焼かれ灰となる、と告げられたことに恐れをなし、草木たちはいろいろな言い訳をして回避しようとする。
そんな中、普段は炭焼き用の木として用いられる「うばめがし」が、その役を買って出る。「わたしが十字架になります」とはこのうばめがしの言葉だ。ところが、この言葉を聞いた天使が突然豹変し、「炎の剣」で言い訳した草木たちを焼き滅ぼそうとする。すると、うばめがしが「神よ、かれらはなにをしているのかわからなかったのです。どうか、おゆるしください」と、十字架上のイエスと同じ言葉で懇願し、天使は剣を鞘におさめる。イエスの死と復活を共に経験したうばめがしは、いまやエデンにおいて「善悪を知る木」および「生命の木」と並んで、「十字架の木」として植えられ、記憶される存在となった。
このストーリーには数々の聖書的寓意が発見される。聖書に親しんでいる人ほどそれは理解される。8編全部がそのように象徴と寓意の宝箱のような濃密な内容となっているが、聖書の知識がなくとも、それなりの理解の仕方で読者の心に深い感銘を与える作品となっている。特筆すべきは、8編のいずれも虹色の光を放つ水滴のような言葉が散りばめられた美しさと哀しさと優しさに満ちた物語となっている点である。著者は正教司祭であるが、宗派の違いを超えた普遍的心性に根差す作品であること、またイコン画家の白石孝子氏の挿絵と詩人でエッセイストの山崎佳代子氏のあとがきも秀逸であることを申し添えておく。(「本のひろば」8月号)

(ひさまつ・えいじ=龍谷大学国際学部国際文化学科教授)
(四六判・二一六頁・一五四〇円・ヨベル)

クリスマス小品集『みちびきの星』(及川信 著)
好評販売中


クリスマス小品集『みちびきの星』(及川信 著)


2021年11月15日刊行
及川信著 クリスマス小品集『みちびきの星』
1,540円(税込)
詳細:株式会社ヨベル
お求めは京都正教会まで


2022年12月 宮城県大崎市、コミュニティFMにて放送
及川信 作「みちびきの星」

おおさきエフエム放送 <https://oosaki-fm.or.jp/>

国重要文化財指定記念イコン

国重要文化財指定記念イコン
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拝観記念証、その名も「Kyrie=主印」取扱い開始

キリスト教会では恐らく初登場!

昨秋、藤袴の花に集うであろうアサギマダラと、修復前の聖堂外観から、初回は"あさぎ色"を選びました。

500円の献金にて頒布、限定300枚
伝教者が心を込めて手書きいたします。

聖堂内部を拝観いただいたご本人様への頒布とさせていただきます。
サイズは御朱印帳の片面、A6判より少し大きめです。
切り絵御朱印の特性上、書き置きしたものをお渡しいたします。

■対応可能日時

①聖堂公開日(事前予約いただくと確実です)

別途500円の文化財維持献金を頂戴しております。

②祈祷の前後

短時間でもお祈りにご参加いただけるならば、文化財維持献金はお気持ちで構いません。

祈祷中は対応いたしかねますので、予めご了承ください。

恐れ入りますが、"聖堂拝観記念証"につき郵送等の対応はいたしかねます。ご来堂いただいた際にご用命くださいませ。